仁木町移住日誌 初日

朝8時ごろ目覚める。相変わらずセナはトイレを探している様子。焦る妻に申し訳ない私。12時50分羽田発北海道行きの飛行機に、初めてセナとダキを連れて行く。前日に同意書をコンビニで2部印刷して記入した用紙を準備した。スーツケースに北海道で引っ越し荷物が届く4日までに必要なものを詰める。取り急ぎの工具、特に無印のスタックシェルフの六角レンチやメジャー、持っていってもらえなかったテレビなどの電源、アンテナケーブル類、インターネット機器類を詰める。

荷物が多い上に、セナとダキを運搬ケージに入れて運ぶ必要がある。事前に妻から羽田までのタクシーの手配を依頼されるが、妻が捨てずに置いてくれていたサブスクタクシーは渋谷区限定、ネットで調べると一般タクシーはペットNGとのことが直前でわかり、慌ててネットでペット輸送を探すが手配できるドライバー見つからず、段取りの悪さを反省する。諦め切れない妻は直前まで電話していた。(申し訳ない)さすがにトイレに苦しむセナを飛行機に乗せるのは心苦しくて、どうにかトイレ済ませられないか試行錯誤する。いままではアイリスオオヤマの全身隠れるトイレを使っていた兼ね合いで、セナが好きな音声水の段ボールが丁度全身入れることから、空き箱に簡易トイレシートと簡易トイレペレットを入れて、セナにここがトイレだよと伝える。いつものようにトイレ掃除しているかような仕草をしてみせたらセナがわかってくれたようで、中にはいっておしっこをしてくれた。やった!と妻に報告して、出発準備を進める。

そして外は豪雨。セナはリュックに(異変に気づき、慣れ親しんだお家から離れるのが嫌だったのか、相当嫌がっていたが、妻と協力して中に入れてチャックを締めた)、いつものショルダーバックにダキを入れて、大小のケージは一つにまとめて2人スーツケースを引きずりながら代々木上原の駅に向かう。流石に雨は想定外だった、傘で一手奪われるのは辛い。代々木上原から原宿(千代田線の改札でスーツケースのタイヤが一つ壊れてバランス崩す、とことんついていない)、品川、羽田空港へと到着。散歩できなかったダキの脱糞を恐れてちょっと散歩。受付カウンターの勝手がわからず、結局、出発30分前ギリギリの受付となってしまった。

初めてのことで妻はかなり心配している。お水と保冷剤をつけるか聞かれ、お願いする。お水は事前に準備しようかとも思ったが間に合わず、でも、空港スタッフが新しい薄型でケージ入り口に固定できる理想的な水筒をつけてくれた。(あとでこれはもらえたのでラッキー)ペットお預けどころか我々の20分前搭乗手続きの締め切り時間が迫り、焦るスタッフに誘導され、ギリギリ搭乗口へ、そして機内の非常口席(足が伸ばせるので、体が大きい私は空いていたらできるだけこの席にしている)で、妻と私は少しほっとする。

羽田も雨がすごかったが、飛行機が飛び立ち、厚い雨雲を突き抜けると、その上は全く別世界のようにもくもくと静かな雲の上を多少気圧で揺れながらも確実に北海道へと近づいていく。雨雲は東北から北海道まではまだ届いていないようだ。定刻通り13時20分、新千歳空港に降り立つ。私と妻が交互にトイレをすまし、預けたスーツケースと、セナ&ダキを受け取る。セナは鼻の頭に汗をかいて、そうとう怯えていると妻が指摘、ダキは大丈夫そう。どうすることもできず、予約した日本レンタカーの受付に向かい、レンタカーまでの大型送迎バスに乗る。

ペットを乗せられる車はスバルのレヴォーグしかなく、仕方なくこれにした。運転も6年ほどしていないことから相当心配ではあったが、(6年前は北海道での運転なのと、向かう仁木町は田舎なのでなんとかなると開き直っていた)受付している間、妻にダキの散歩をしてもらう。無事トイレできた模様。用意されたレヴォーグはほぼ新車のニュータイプ。全面ナビもまるでテスラのような大型タブレット縦型のモニタで、妻も興奮すしている。トランクに2人のスーツケース、セナ&ダキをゲージに入れたまま後部座席に乗せた。再びセナの鼻の頭の汗にフォーカスがあたる。セナに相当ストレスがかかっていることがわかる。(ごめんね、もう少し辛抱してください…)

広めのレンタカースペースで、手慣らしの運転練習を追えて、行き先を余市の不動産事務所にセットして、すぐに高速に乗って仁木町へと向かう。久しぶりの運転で妻も不安がっているが、レヴォーグの親切設計に助けられ(サイドミラーに車が近づいたり、車線を少しでも踏み外すとアラートで気づかせてくれる、センサー搭載車両の恩恵を初体験、これは、すごい!)高速でも時速100kmを越えたあたりから体感が変わることを知覚しながら「いまはすごくビクビクしているけど、人間って慣れると調子のっちゃうんだろうね、今の自分にはスピード違反で捕まる人の気持ちがわからない…」などと数日後にはスピード出している自分を嘲笑うかのような話を妻にした。

高速に乗るも、車窓から見える広大な自然、そして広い空を眺めながら、妻と北海道の無限大な可能性を改めて認識する。妻がラジオをつけたり、ハッカ飴をくれたり、運転の緊張を少しリラックスしてくれた。最初、運転とナビの勝手がわからず少し遠回りしたが、高速に乗ってからは順調に余市に着く。新しく開通した小樽に向かわず余市にショートカットしてくれる。(ありがたい)車に乗って2時間ほどして高速を降りて、見覚えのある余市駅近辺の景色が見えてホッとする。セナ&ダキは疲れたのかとっても静。

ナビの誘導で、リモートで手続きした余市の不動産ホームセンター企画の事務所に到着。やりとりしていた藤田さんと初対面。事前に契約書類に記入と印鑑を押して送付済みのため、手続きはスムーズに終わる。最近、「移住者はおおいいですか?」と質問すると「丁度、中山ぐらいの年代で東京で活躍されている方の契約が増えている」とのこと。やはりそうなんだねと妻と顔を合わせる。余市から仁木町までの5号線は、え、この程度で捕まるの?というぐらい取り締まりが厳しいらしいからスピード気をつけてとアドバイスもらう。すでに高速2時間時速100kmで調子乗った私にとってはとても貴重なアドバスだった。

ナビに自宅の住所をセットして、いざ新居のアパートに向かう。散々Googleマップのストリートビュー(築5年のアパートはまだ建っていない状態写真ではあったが)物件を吟味しているときに散々見ていたので、迷うことなく到着する。駐車場が一番端っこで助かった。鍵を開けて新居の中へ、室内写真は見ていたが、実物をはじめてみる。とても綺麗で、間取りもとてもよいと妻と興奮する。図面上、前のうちよりもせまくなるリビングも気にならず、むしろ使い安そうな空間で、これは当たりだ!

日当たりもよく、窓を開けるとすぐに涼しい風が中に入ってきて気持ち良い。窓からの見晴らしも自然の緑があり、心地よい鳥の囀りが聞こえてきて、最高だ!ダキのうんちがまだだったので、妻が散歩しくれる。早速したみたいだが、「すごい路地の木にさくらんぼがなっている!食べれそう!」と妻が興奮して帰ってくる。田舎時間で田舎の醍醐味を経験したことのある私は、これからもっと驚きがあるよ、と内心思いながら、リビングに座り、ライフラインの手続きを確認しながら、ちょっと休憩…といきたいところだが、定例の打ち合わせの時間に気づき、キッチンカウンターにPCを乗せて、Zoom会議をする。参加メンバーに早速窓の外の景色を見せ、羨ましがられる。「なぜ、みんな移住しないんだい?」と。(さっそく調子のっている)

打ち合わせ中、宮下さんからのご紹介で、つい2週間ほど前に東京でお会いした茶人の原さんからFacebookメッセンジャーで電話もらう、妻に出てもらい、打ち合わせ後、原さんがいまニセコにいるので、よければ会いたいと連絡もらう。宮下さんに電話で到着の挨拶と、今晩の寝る準備などバタバタしていることを伝え、宮下さんとの会合は後日にしてもらう。原さんに事情を伝え、余市のイオンで寝具コーナーで今晩の寝床(といってもいずれ受け入れるであろうお客様用の寝具にも使える前提で)の準備をしているところに来てもらう。

原さん到着、東京でお会いしたときとよりラフな格好でだいぶ印象が違う。「よーこそ、北海道仁木へ!」と歓迎してもらう。原さんがニセコで打ち合わせしてきた、近日オープン予定の八海山の施設の写真を見せてもらいながら、八海山の素敵なボトルの日本酒を2本ありがたく頂く。壊れたスーツケースの代わりになりそうな手頃なものがあったので購入。ご飯は、まん延防止等重点処置でどこも21時までの営業、以前宮下さんと2度ほど訪問している余市の回転寿司「余市番屋」にギリギリラストオーダー前に到着。

先にトイレから戻ってくると、妻から「私これとこれを食べたい」と言われる。私は疲れからか、引っ越しのいらいらからか「自分で頼めばいいじゃん」と突き放してしまった。そこから口論のはじまり。ただ、ラストーダーが迫っていることから、地魚や自貝を次々注文して、私は食べ、妻は口論していると美味しく食べられないからとスローペース。しばらく言い合いながらも、閉店時間をすぎて、店内清掃をはじめるスタッフに申し訳なくお会計を先に済ませて、妻が食べ終わるのを待つ。

帰り、北海道限定のコンビニ、セイコーマートに寄る。機内誌でみた北海道地域ごとのお酒をそれぞれ好みのものとを1本づつ購入(妻は余市町産完熟トマト酎ハイ、私は美瑛町産ハスカップサワー)と明日の朝ごはんとしてヨーグルトドリンクやバナナ、お水を購入して帰宅。玄関の電気が点いていることを気にされてお隣1階の方が心配そうに玄関から顔を出す。「こんばんわ、今日引っ越してきました。ちょっとおってご挨拶させてください」「あら、どうも、玄関に電気点いてたもんだから、誰だろうと思って」「あ、これスイッチで消せるんですね、ごめんなさい勝手がわかっていなくて、すぐに消します。また後日ご挨拶させてください」「どうも」というやりとりがあった。

リビングで妻とふたり体育座りとあぐらかいて座りお酒を飲みながら、口論の続きを近隣迷惑も考慮して小声で続けて、2人少し落ち着いたところで、購入した寝具を準備して午前1時過ぎに就寝に着く。